ミンガラバー。
ミャンマーは民族衣装を普段着とする世界でも数少ない国のひとつです。
ミャンマーの民族衣装といえば、ロンジー。ロンジーは巻きスカートのような輪状に縫われた布で、男性用はパソー、女性用はタメインと呼ばれ区別されます。
多民族国家のミャンマーでは、民族ごとにロンジーに施される模様が異なります。最近は若いデザイナーがプロデュースする先進的なデザインのロンジーも出てきて、バリエーション豊かなロンジーは見るのも着るのも楽しいものです。
ところが最近、特に若者の間でこうしたファッション事情に変化の波が起きています。
街を歩けば、短パンやミニスカート、タンクトップをモデルのようなすらりとした体型で着こなす女の子をよくみかけます。
流行の最先端をゆく女の子たちによると、今アツいのは韓国風ファッション。
私の友人は、パゴタ(ミャンマー様式の仏塔)参拝用のロンジーを1着持っているだけで、普段着はもっぱら洋服だといいます。
ファッションだけでなく、芸能、コスメ、グルメetc. における韓流人気は目を見張るものがあります。
韓流ブームの背景として、コンテンツ産業*の振興を後押しする韓国政府の狙いがあるのは有名な話。コンテンツの制作や輸出の支援政策により、安価な韓国コンテンツが東南アジアを中心に急速に普及しました。
たとえば映像。韓国ドラマは毎日様々な番組が放送されます。インドや日本の番組も放送されるにはされますが、放映数でいえば韓国が断トツです。
私は昨年首都ネピドーのイエジンという小さな町に留学していました。娯楽の少ないこの町で、人びとの数少ない楽しみといえば韓国ドラマ。毎晩夕食の時間になると、テレビを持つ友人の部屋におかずをもって集まり、皆で韓国ドラマを見ながらご飯を食べていたことが懐かしく思い出されます。
韓国ドラマは家族愛を扱ったものが多く、家族間の激しいほどの愛情や衝突をテーマにした韓国ドラマは、家族とのつながりが深いミャンマー人の間で受け入れられやすいのかもしれません。
お茶の間にうまく入り込んだ韓国ドラマが、人々の趣向や消費に圧倒的な影響を与えるのは当然の結果といえるでしょう。
さて話を戻すと、そう、ファッション。
おしゃれは日々の活力になりますし、ミャンマー風・韓国風問わずたくさんの選択肢の中から自分に似合う服を選ぶのは楽しいですよね。
ただ、ミャンマーの人々の間で民族衣装であるロンジーのプレゼンスが下がりつつあることに一抹のさみしさも感じてしまいます(日本では浴衣も着物も年に1回着るか着ないかの私が言うのも誠に勝手な話なのですが…)。
シックなものから色鮮やかなものまで、バリエーション豊かなロンジー。時には、日本人が思いつかないようなハッとする色の組み合わせや柄を見つけるのも楽しさのひとつです。
外国の流行を受け入れつつも、ぜひこの愛すべきロンジー文化をますます発展させてほしいなと、勝手ながらも願ってしまいます。
*コンテンツ産業…映画、アニメ、ゲーム、書籍、音楽等の制作・流通を担う産業の総称(経済産業省ホームページより)。