1.ミャンマー法人税
概要は、以下の通りです。
(1)税率
原則25%です。但し、ヤンゴン証券取引所の上場企業については、法人税率は20%とされ、細かくなりますが所得分類により若干異なる場合があります。
ミャンマー会社法により設立された会社は、全世界所得に対し課税され、非居住法人は、外国法人支店を含め、ミャンマー国内源泉の所得のみに課税される。
(2)損金算入
一定の範囲で損金に算入できる。すなわち、損金算入できないものとして、資産の取得費、個人的経費、事業規模に比し不相当な費用、不適切な支払い、所得獲得以外の目的による支払い及び会社や共同企業以外の団体の構成員に対する支払いが規定されている。
(3)繰越欠損金
損失が生じた場合、将来利益に対し使用でき、キャピタル・ロスを除き、3年間の繰越が可能。
(4)輸出入にかかる2%前払法人税
財の輸入又は輸出企業は、その財の輸入・輸出商品の評価額に対し2%の前払法人税 を納付しなければならない。但し、一定の例外があり、また前払法人税の納税額は、事業年度末の期末申告の際に、法人税額から控除できる。
2.ミャンマー法人税の実態
ミャンマー所得税法は、各所得を種類別に分類し(給与所得、不動産所得、事業所得等々)、その所得分類の一つである「事業所得」に法人の事業所得も含まれると規定し、これが法人の課税根拠とされております。当時の英国所得税体系の影響強く受けているようで、所得税法という一つの税法の中で個人所得税と法人所得税とが“混然一体”となって規定されております。このため法人税に関する原則、所得税法に関する原則、両者共通した原則といった規定も全くなく、税法上は個人と法人とを明確に整理・区分するような形にはなっておりません。法人に対する所得課税をあまり想定していなかった古い時代の税法が、今まで存続してきたようにも見えてしまいます。2018年8月1日から新会社法施行されましたが、旧法は、第一次世界大戦が勃発した1914年に施行されたもので、その後大きな改正はなされてこなかったとのことです。旧会社法では、会社名にCrown等、英国王室を連想ささせる会社名は使用禁止とする規定もありました。現在のミャンマー所得税ですが、その根幹部分は、この旧会社法に勝るとも劣らぬ昔の古い税制のようです。一言でいえば、所得税とはいっても殊に法人課税に関しては、極端に規定が少なく、これは法人課税をあまり想定していなかった時代の産物のような気もしてしまいます。これでは、ミャンマー税務当局の調査官も何をどう否認してよいやら、困ってしまっているのが実体では。また、ミャンマー所得税制の制定及びその後の経緯に関しては、どのような資料が保管されているのか、これまで見たことも聞いたこともございません。
3.ミャンマー法人税制の理解のため
ところで、実際問題としてミャンマーで法人税の申告に際し、課税所得はどのように計算し、納税額を申告するのでしょうか。日本流にいえば、法人税申告書には、どういう添付資料があるのでしょうか。
日本の法人税申告書は、その1枚目で所得金額と税額計算のまとめがあり、続いてその後に各種の別表が沢山添付され、これ全体を法人税申告書といいます。
では、ミャンマーの法人税申告書はどうなっているのでしょうか、実は日本とは大きく異なります。ここらあたりの申告実務、申告書の記載欄を個々に確認してゆきますと、実際のミャンマー法人税制の特徴やあり方が、見えてきます。
このコラムでは、過去全2回にわたり、外資系企業に対し賦課課税方式から自主申告制へ移行をテーマとして取り上げ、問題点にも触れてきました。重要なことは、具体的に何が変わったのか、その法的裏付けはあるのかで、既に述べたとおりです。
賦課課税方式から自主申告制への移行といわれておりますが、まず一見して明らかに変わったのは、法人税申告書のフォームです。新しい申告フォームは、枚数も多くなり、記載欄も整い、より法人税申告書らしく見えるようになった気も致します。
ただこの新申告フォームですが、一部の企業(LTO及びMTO1管轄の外資系企業)では、少し前の事業年度から使われだしておりましたが、2020年10月以降開始年度から全外資系企業が自主申告の対象とされるとともに、この新フォームで法人税申告を行うよう統一されました。
では法人税申告書のフォームは、2020年9月期を境に実際どう変わったのでしょうか。基本的に何かが大きく変わったのでしょうか、この点、今後のミャンマー法人税制及びその実態を理解する上でも、重要かと思います。
そこで次回以降、2020年9月期まで使用されていた旧法人税旧申告書について、具体的に見てゆき、その後、今期2021年9月期以降使用される新フォームについても、簡単に見ていこうと思っております。ただ法人税申告書の記載方法については、解説は添付されてないようです。