<ミャンマー税務・会計> No2

1.連載2回目

連載初回(前回)は、たまたまこの3月に公表された外資企業の自主申告納税へ全面移行を例に、ミャンマー税制の整備状況及び税務運営の実態を理解していただく参考にと思い、若干のコメントを加えておきました。要は、何がどう変わるのか、その裏付けとなる具体的な法の中身が見えてこないと、よくわからないのではという気もしております。
外資系企業を一括して所轄する税務署、すなわちMTO-2の管轄法人は、現在、約4500社あり、2020年10月開始の自主申告制にそなえ、説明会を開催し、「納税者登録及びヒアリングシート」の提出を求め、水かけ祭りの前には一応完了したようです。
ところでこのヒアリングシート(薄緑の冊子)ですが、どうもこれまで長らく未整備となっていた移転価格税制に関し、これを手始めに整備が進められていくのではというが感じがします。
そこで今回は、今後のミャンマー移転価格税制のヒント(例えば、関連者についての25%基準等)になる可能性もありますので、簡単に触れておきたいと思います。
 

2.関連者(Related entities)情報の記載について

シートは全部で33ページ、記載要領が半分をしめるため、残りが会社基本情報です。その中で目に付くのは、株式支配関係及びグループ企業(Group companies)について、MTO-2が初めて情報開示を求めてきた点です。
具体的には、株式保有を通じた関連者に関し、以下の記載を求めております。
① 自社で他社の株式25%以上を保有している場合は、その保有対象会社に関し一定の事項(納税者登録番号、会社名、住所、保有割合)
② 次に、逆に自社株式を25%以上保有する会社がった場合、その会社についての上記4項目
③ 自社がグループ会社に属しているときは、そのグループの名称
また、一方で「関連者」とだけ言って「国外関連者」という用語を使用しておりませんので、移転価格税制を国内取引も含めた内外共通の税制としている可能性も考えられます。
資本を通じた関連者の定義ですが、日本、韓国、タイなどは50%以上保有とする一方、ベトナム(20%)、インドネシア(25%)、中国(25%)、インド(26%)などは、ミャンマーとほぼ同様です。今後のことはまだ明確ではありませんが、日本とは関連者の範囲などが異なる可能性があります。 
なお、このシートですが、関連者ごとの取引概要や取引金額等は、まだ開示対象とはされておりません。そして、MTO-2法人は、上記シートを今回1回提出すればよく、毎年提出とまでは要請されておりません。しかも、関連者の範囲を判定する際の具体的な取り扱い等も示されておらず、当局も現時点ではこの記載事項をほとんどチェックしないまま受理しているようです。
 

3.シートが意味する申告対象者とは

シートの初めのページに申告対象納税者が10者に分類されておりますが、上から2番目「Association」と3番目「Company」に注目したいと思います。
まずCompany(会社)ですがこれに6つあり、ミャンマーで設立された法人や外国法人のほかに、Joint Venture 及びPartnershipが記載されております。このうちJoint Ventureは、共同で事業を営む合弁会社の意味に使われますので、一般にはミャンマー法人に含まれると考えられます。しかしここでは、そうした一般的理解とは異なり、法人を新設しないで契約による共同事業形態を想定し、その意味ではパートナーシップ(DICAで設立許可ゼロ、事例なし)に準ずるものとしますと、本来的にJoint Venture、Partnershipといった契約による事業形態が事実上ミャンマーに存在した場合、税務上はその存在自体を否定することはせずに、理屈はともかく、運用上はこれらを一般に「会社」として扱い、これに直接課税する方針を述べているのでしょうか。つまり構成員課税は認めないという趣旨なのでしょう、明確ではありません。
 

4.ミャンマーにおけるインフラプロジェクトとの関連

シートの上から2番目の「Association」も同様です。日本語では「団体」と訳される場合が多いかと思いますが、そもそも、具体的にどういう事業形態を想定しているのでしょうか。
ミャンマーでは大規模なインフラプロジェクトが開始され、そのためエンジニアリング・調達・建設といった一括請負プロジェクトを組成する契約形態がとられる場合が多いと思います。実はこれを「コンソーシアム契約」といい、「Association of persons」(所得税法の定義規定)の典型と言われております。そこでもし「Association」と「Association of persons」が同一としますと、このシートで「Association」を独自の納税者として掲げたことは、コンソーシアム契約を独立した課税事業体とすることをミャンマー課税当局が表明したものととらえるべきなのでしょうか、これはインフラ開発の参加企業にとって、課税上、大変影響が大きいかと考えます。
以上、課税対象者に関する用語・概念は大変複雑ですが、重要です。一度全体を整理していただき、明確にしたうえで、このヒアリングシートの記載要領にて説明や見解を示していただけると、納税者は大変助かります。