1.ミャンマーの法人税申告
前回までにご説明しましたように、2020年10月以降開始する事業年度から外資系会社に関し、自主申告制が採用され、これに伴い法人税の申告フォームも新しいものに変更されるとのことです。このため2020年9月期までの申告書は、従来のフォームが使用されます。
法人税等の申告フォームですが、2012年3月31日付の内国歳入局のGeneral Directorが発遣した通知(通達と訳すべきか)によれば、フォームは全部で28あります。なお、上記通達の現時点での最新版は、未確認です。
2.実際の法人税申告書は、どんなものか
例えば次の会社を例に、実際の申告書(フォーム1)を見ていきます。
会社名 : | ABC MYANMAR COMPANY LIMITED |
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事業内容: | サービス業 |
事業年度: | 2018年3月期 |
当期損失: | ▲150,000,000KS |
税務調整項目: | 備品の減価償却にあたり、税務上の耐用年数10年のところ、会計上取得時に一括損金算入したいたため、減価償却費が税務上9,000,000KS過大に計上。 |
提出する税務申告書の構成は、極めてシンプルで、①所得の種類等、②誓約、③申告書類の受領証の3つからなり、監査法人による監査済み財務諸表を添付して、税務署へ提出します。
税務担当官は、申告書と財務諸表を確認しますと、③の受領証に押印し、申告書の最後の方にある点線部分に定規をあて、受領証部分を切り取って、紙ペラを納税者に渡してくれます。この受領証には、以下の記載があります。
納税者(氏名等、住所)より、2018.4~2019.3の賦課課税年度(納税者の2017年3月期)の所得税申告書を受領致しました。
フォーム1
税務申告書
氏名、会社名:ABC MYANMAR COMPANY LIMITED
職業又は業種:サービス業
住所 :XXX Yangon
- 2017.4~2018.3の所得
所得の種類 所得金額Part Part(A) ミャンマー国内の所得
①給与所得
②専門業の所得
③Business income
④Rental income
⑤Capital gain
⑥所得源泉が不明な所得
⑦その他の所得
以上の合計金額▲150,000,000KS ▲150,000,000KS
Part(B)
ミャンマー国外の所得でPart(A)以外のもの - ①事業年度内に納付済みの所得税金額は、XXX
②事業年度内に振り込んだ生命保険の保険料は、XXX
③事業年度内に振り込んだ政府公認の貯金は、XXX - 2018年3月末現在、私と同居し又は生計を共にしている妻は、当該年度で所得税の課税対象となる所得は得ておりません。
- 同居し、扶養している母又は(及び)父がおります。
- 2018年3月末現在、私が扶養する子(連れ子又は養子を含む)は以下の通りです・・・。
誓約
- 私又は会社等の事業体は、上記申告内容が適正であり、その他に所得のないことを宣誓します。
- (a)私は、当該事業年においてミャンマー国内に居住していた、又は国外に居住していた。
(b)事業体のメンバーXX人のうち、XX人は、当該事業年度中、国外に居住していた。
(c) 会社の株主には、外国株主がいる、又はいない。
●宣誓日XXX(実際は省略) ●申告する者のサイン
●会社の社印スタンプ ●法人等の設立時の番号(実際は、殆ど記載していない)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(切り取り線)
申告書類の受領証
納税者(氏名等、住所)より、2018.4~2019.3の賦課課税年度(納税者の2018年3月期)の所得税申告書を受領致しました。
3.法人税申告書の主な特徴
① 法人、個人とも同じ申告書(「フォーム1」)により行います。日本のように法人・個人ごとにフォームが区分されてはおりません。
② 申告書には、会計上の当期損益と課税所得をつなぐ税務調整用の記載欄(日本の別表4及びその明細)や利益積立金(別表5)などありません。
③ このため税務調査官は、会社の財務諸表のみ見ております。
④ 賦課課税制度のため、課税当局が最終税額を決定する期限(賦課課税年度)が表示してあります。所得年度の翌1年間(2018.4~2019.3)となります。